5/10

昨日はシンくんの1歳の誕生日だった。見つけたレシピを参考に、ホットケーキミックスにバナナとすりおろしたりんごを混ぜて炊飯器でスポンジを作り、水気を切ったプレーンヨーグルトでデコレイト。いちごがあいかわらず激安なので、これでもかというくらいふんだんにのせて、見栄えはなかなか立派なケーキ。(クリーム塗るのへたくそなので、いちごをのせまくってごまかす)しかし、そもそも食べることに淡白なシンくん、たったの一口も食べず…! まあ記念写真が撮れたからいいか。わたしとアキからのプレゼントは、木製のミニピアノ。べつに「将来ピアニストになってほしい!」とかはぜんぜん思ってないけど、音が鳴るものが大好きなので。しかしいちばん楽しんでるのは、他でもないわたし…。いつかまた、ピアノをもう一度習いたい。
夜は、わたし一人で、薬院の近くで行われていたトークショーへ。福岡デザイニング展の一環。テーマは「活版印刷と電子書籍」について。なかなかおもしろかった。
写真を見せて!とのリクエストがたくさんあり、一人一人にメールするのがめんどうだったので、本名の方のfacebook(普段ほとんど使ってない)に写真を何枚かアップした。ひさしぶりな人たちから色々コメントが。そのうちの一人が、16歳だったわたしに日本の外を初めて見せてくれたDiana。なんと彼女も2年前にギリシャで出産していた。パートナーのDarkoとはまだ法的には結婚してなくて、まあ数年後にでもしようかな、という感じらしい。彼は、プロのバレーボール選手。ギリシャやパリで数年過ごし、去年の秋に、実家があるトロント郊外に3人で戻ってきたとのこと。ディアナが「そのうちスカイプしよ〜」とメールしてきたので、「うん、しよしよ〜」と返したのが昨夜遅く。そして今朝さっそく「今はどう?」とメッセージが。うーむ、あいかわらずの行動力…。息子のMaksim、めちゃくちゃ可愛い。2歳にしてすでに3カ国語(英・仏・スロベニア)理解している。「母親業、どんな感じ?」とディアナにきいたら、ものすごい笑顔できっぱりと「I love it!!」すばらしい。なんと彼女らしい回答。ギリシャでは専業主婦をしていたディアナだけど、トロントでは、また弁護士として働きはじめたみたい。今はダルコが、主夫をしている。いろんな夫婦のかたちがあるなあ。


去年ノートにつけていた日記の、5/9分はぎっしり4ページ分ある。
その中からほんの数行だけ抜粋。


出てきた赤ちゃんは、意外と毛がふさっとしていて、
耳が大きく、鼻も大きく、
たぶんまゆ毛はアキゆずりのおにぎりで、
爪は伸びていて、手足はしわしわだった。
耳がめちゃ福耳。口はアヒルみたい。
お湯でキレイにしてもらったあと
また抱かせてもらうと、両目がぱちっとひらいていた。
まぶたははれぼったいけど、黒目がきらきら。
泣き方はまだ可愛らしくて「ふえ〜ん」。(高めの声)


産まれたよ!という報告メールを、長崎に住む友人にしたら、「寝る前に未読だった谷川俊太郎の本を何となく本棚から取って読んで、詩を一つ読み終えて電気を消したときに携帯が(メールの着信で)光ってることに気づいた」という。その詩は「ぼく」。長いので、最初のところだけ引用します。

ぼくは
うまれた
かぶとむしが
くりのきをはい
みずたまりが
かすかなゆげをあげる
あさ
めもみえず
みみもきこえず
ただくちだけを
おおきくひらいて
はじめての
くうきのつめたさに
ひめいをあげ
ぼくは
うまれた

5/5

連休前半は家族総だおれだったので、その疲れを癒すべく、佐賀は古湯温泉へ。今は福岡の早良区に住んでいるので、三瀬峠までは案外近い。行きはアキが運転。天気がよく、シンくんは暑がるので、ベビーシートに取り付ける用の保冷剤セットを持って。これからの季節は必携。
家族風呂が予約可能だという理由で「大和屋」さんを選んだ。古湯温泉には初めて行ったけど、温泉街じたいがわりと小ぶりで落ち着いていて、とてもよかった。大和屋さんも、清潔で、建物の中に光がよく入り、木々を上手に使っている。「今日は大安なので、結納が二件もあるんですよ」と、美人のおかみさん。着物姿で歩いている女性も見かけた。家族風呂は、六尺の大きな酒樽でできたお風呂。室内だけど、障子がぜんめん開け放たれ、半分露天風呂のような感じ。古湯温泉の泉質は、「約38度のぬるめの泉温とぬるぬるした心地良い肌触りという特徴から、『ぬる湯』と呼ばれている」そうだ。やわらかいお湯に、疲れがゆっくりとけてゆく。お風呂が大好きなシンくんも楽しそう。日によっては、「薔薇風呂」になるらしく、その薔薇が一輪落ちていて、シンくんはめざとくそれを見つけて、花びらを一枚食べてしまった。
お風呂を上がると、昼食の時間。宿の喫茶で、「三瀬鶏のカレーセット」をいただく。付け合わせのサラダには、みかんのドレッシングがさっぱりと使われていた。ドリンクに、わたしはびわ紅茶、アキはアイスコーヒー。びわ紅茶って、びわの葉茶と紅茶を混ぜてるのかな?と思いきや、実の皮を使った紅茶とのこと。ほのかにあまくて、おいしい。あと、デザートに抹茶のロールケーキ。中のクリームには栗が入っていた。
大和屋さんの玄関先には、立派な五月人形が飾ってあって、シンくんと並べて写真を撮る。「『これ、うちの玄関です』って言ってブログにアップしようか」などと言いながら。
帰りはわたしが運転。田舎ののどかな道を、誰にも(特に後ろの車に)せかされずにゆったり運転するのって、すごく好きだ。左右にひろがる山の新緑や、畑に咲く菜の花と一体になって走っているような気分になれるし、なによりそこには小さな自由がある。止まるも、進むも、どの道を行くも、わたしの自由。ちょうど藤の季節なので、あちこちに咲いている。藤棚に整然と咲いているのもきれいだけど、山の中で、のびやかにツルを伸ばして、たくましく咲いている野生の藤が、ものすごく美しい。背景の深い緑の効果で、藤のむらさき色がいちだんとあざやか。まるでぶどうのよう。
午前に家を出たので、15時には家に帰ってきた。夕方、商店街で菖蒲の葉を買う。一束100円。子連れの人はもちろん、子連れじゃなくても、買って手に持って歩いている人たちがたくさんいる。大阪や東京で、こんなにみんな菖蒲を買ってたっけな? わたしが気づいてないだけ? 夜、お風呂に浮かべて、シンくんの健やかな成長を願う。上がってから、柏餅も食べた。こどもの日。

5/3

5月になった。去年の今ごろは、毎日「今日生まれるかも!」って思っていた。それでも毎日2時間くらい歩いていた。たくさん歩くと安産になるし、体力もつくから産後にも役立つってきいて実践したけど、ほんとうにその通りだった。しかし1年前は、まだシンくんわたしのおなかの中にいたんだな。おなかの中にいるときから、よく動く子だった。
2日前、シンくん発熱。風邪。薬を使うことなく(今って、できる限り様子見が基本で、むやみに薬を使えって言わないお医者さんがふえてるのかな)治る。でも治るまではぐずぐず。わたし自身も体調が悪いときはずっとぐずぐず言う子どもだったので、その気持ちはすごくよくわかる。ぐずぐず言うことで不安感を発散するのだ。昨日は一日中抱っこ。今日はすっかり元気に。そして代わりにアキが熱に倒れる。風邪の症状はなく、疲れがたまってたみたい。
もともとけっこう熱を出しやすい体質のわたしなのだが、妊娠してからというもの、一度も発熱していない。軽い鼻風邪程度ならあるけど、病院に行くようなたいそうな風邪や病気に、一度もかかっていない。それは、「自分は絶対倒れられない!」というふうに張りつめているからかもしれないし、体質が変わったからかもしれない。友人は「母乳をあげてる間は一度も風邪引かなかったけど、やめたらまた引くようになった」と言っていた。関係あるのかな?
アキのために、夜、自転車でスーパーに走る。スポーツドリンクと栄養ドリンクをたのまれたけど、ついでに、アイスとうどんとパンも買った。今日は5月にしてはひんやりしていて、風がとても心地よかった。夜に一人で自転車に乗るのなんて、いつぶりだろう。スーパーまでの道のりでは、一人ってなんて身軽!とのびのびしてたのに、スーパーの中で小さい子をみたら、もうシンくんのことを考えてしまう。帰ってきたら、寝てたはずのシンくんは起きて泣いていて、いつもだったらあやしてくれるアキも、39℃の熱で起きあがれず。たいへんだたいへんだ。こういうときに発動するのって、母性本能というより、人間の本能だと思う。

4/29

図書館へ。わたしは借りたい本を借り、シンくんもキッズスペースみたいなところでたくさん遊ぶ。シンくんは9ヵ月あたりからすごく人見知りをしてたのだけど、最近は全然しなくなり、同じような月齢の赤ちゃんに突進していっては、「ヨシヨシ」しようとする。(実際はパシパシ!が近いが、本人はなでてるつもり。)あと、ベビーカーに乗ったまま、すれ違う人たちにサッと片手をあげる。バイバイのつもりなのかしらないけど、まるで知り合いに「よ!」って言ってるみたいで、おもしろい。「よ!」をされた方は、けっこう高い確率で笑ってくれたり、手を振り返してくれる。福岡の人たちは子どもに優しい。
図書館から帰る前に、出口付近のロビーで赤ちゃんせんべいをあげていると、見知らぬおじさんが近づいてきた。水色のランニングシャツと短パンに、めがね、そしてめがね用の大きなサングラス。50代。わりと恰幅が良い。若干うさんくさいので、ロビーの受付のお姉さんがじろじろ見ている。
わたしが気がつく前に、シンくんがおじさんにニコニコしてたらしい。おじさんはいきなり「性格のいい赤ちゃんですね〜」と語りかけてきた。すごいほめ方…。おじさんはベビーカーに座っているシンくんに目線を合わせるようにしゃがみこみ、ペラペラとまくしたてるようにしてしゃべる。
「やっぱり子どもとペットは違いますよね〜。ペットはなんだかんだ言っても子どもの代わりにはならないですもんね〜。でも子どももいつかは出てってしまうんでしょうけどね〜。あ、でも結婚した後も一緒に住めばいいのか」
わたしはただ
「そうですね…」
とだけ相槌を打つ。
シンくんが「だだだ」としゃべったら、
「今、彼はすごい勢いで言葉を吸収してるんでしょうね! 来年あたりそれが一気に爆発してしゃべり始めますよ、きっと! ほら、大人が外国語を学ぶときもそうだって言いますよね。やっぱりアメリカとか現地に行った方がいいんでしょうね〜。俺も行っちゃおうかな〜」
行ったからって簡単に話せるようにはならないですよ、とかいうシビアなアドバイスはもちろんせず、また
「そうですね」
と簡潔に相槌を打つわたし。次におじさんは唐突に
「マックとか行きますか?」
ときいてきた。一瞬アップルのマックかと思い、
「マック?」
とたずねかえすと、マクドナルドのことだった。
「いや、あんま行かないです」
と、そこは正直に答える。それなのに、おじさんはがさごそと財布をあさり、「プレミアムローストコーヒー」の特別ご招待券(タダ券)を二枚取り出し、
「これあげますよ。ドライブスルーって書いてるけど、そんなこまかいとこ誰も見てないから普通に使えます」と言って押しつけてきた。コーヒーあんまり飲まないんですけど、とは言えず、仕方なく受け取る。
「マックのコーヒーおかわり終わっちゃったでしょ。140円を100円にするらしいけど、そんなもん誤摩化しだよ。でもね〜、ホームレスの人たちとかが前日のカップ持ってきて『おかわり下さい』って言っても、誰も今日の分かどうかわかんないでしょ。それにコーヒー1杯で長居する奴も多いし、仕方ないのかね〜」
おかわりが終わったことも知らないわたしは、ただ黙って続きを待つ。
「まあでもそんなんでも、マックは外食チェーン売り上げ2位でしょ。たいしたもんだよ。あ、ちなみに1位はどこか知ってる?」
首を振るわたし。
「ヒント、牛丼」
「……吉野屋ですか?」
「吉野屋なわけないよ!あんなとこ倒産寸前!」
「…じゃあ……すき家?松屋?」
「そうそう!すき家すき家!すき家は店の名前で、本体はゼンショーって言うんだよ。ゼンショーの由来は、全戦全勝のゼンショーだよ」
おじさんがしゃべりまくってるあいだも、シンくんはぱりぱりと赤ちゃんせんべいを食べている。
「日に何回くらい食事あげるの?」
「今はもう3回ですね」
「それが食事?」
「いや…、これはおせんべいなんで、おやつです」
「ああそう」
おじさんは、自分のサングラスを取って、シンくんに近づける。シンくんは楽しそうにさわって遊ぶ。しばらくそうしたあと、おじさんはふたたびサングラスをかけ、頭をがくんと下げて地面を見ながら言った。
「子ども、ほしかったなあ。俺、だめだったんだ〜」
なんとなく、会話の途中で、もしかしてそうなのかな、と思う瞬間があった。軽妙な口ぶりとは裏腹に、シンくんを見つめるおじさんの瞳が、切実だった。でもまさか、はっきりそう言われるとは思わなかったので、少し驚いた。
その後おじさんは、すくっと立ち上がると、「また遊ぼうな〜!」とシンくんに手をふり、図書館を出て行った。

文章のデザイン

2月にHPを作ったことのはポートレイトにこの前初めて、「ギフト依頼」が来た。オーダーしてくれたのは友人なのだけど、オーダーの依頼メールには、そのプレゼントする相手の特徴(外見・性格など)や、ポートレイトを贈ることによってこういう気持ちになってほしい、というような要望がたくさん書いてあった。今まで書いてきたものには、そこまでの情報がなかったので、どちらかといえば、アート作品に近かったと思う。でも、今回のは、すごく「デザイン」っぽいなーと思った。ロンドンにいたとき、よくアートとデザインの違いってなんだろう?って考えてて、その結果、アートは純粋に自分の中から出てくるもので、デザインは、クライアントの要望をくみとって作品にすることなのかな?という仮の結論に達していた(その後あまりそういうことについて考えていないので、アップデートされていない)。デザインは、とにかくクライアントの満足が一番で、作る人ができるだけ透明になることが重要。今回のポートレイトは、まさにそんな感じで、とても楽しかった。グラフィックデザインを4年学校でやって、デザインはもうおなかいっぱいって思ってたけど、やっぱりわたしけっこうデザイン好きなんだなってあらためて気がついた。ことのはポートレイトは、別の言い方をしたら「文章のデザイン」なのかも。
プロフィール

村田 りねん

Author:村田 りねん
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